天使になって
「…妃菜?」
妃菜の楽しそうな笑い声が聞こえた気がして思わず空を見上げる。妃菜が居ることは絶対無いってわかってるけど妃菜は空の中で生きてるから空を見上げてみる。
不意に立ち止まった俺の腕の中で空が不思議そうにしてる。
なあ妃菜…?そこから見てるんだろ?
空は元気だよ。本当元気すぎて困ってしまうくらいに。お前が命を懸けて生んでくれたんだ。健康そのもので毎日お前に良く似た笑顔で俺の方を見てくれるよ。
空にはまだ言葉はよくわからないかもしれないけど俺は毎日言い聞かせることにしてるから。空が大きくなって一人立ちして俺が年寄りになっても言い続けるよ。
お母さんは天使になったんだよって。
だから空は嬉しそうに空を見上げてるよ。妃菜がいつも空から見てくれてるからわかるんだろうな。妃菜が居るってこと。
俺がヨボヨボになって歩けなくなって物もわからなくなっても俺は何回も言い続けるよ。しつこいって嫌われても…。
お母さんは真っ白な天使になったんだよ。お母さんは本当にすごく綺麗な人だった…って。
いつまでも見守ってるんだろ?約束したもんな。
俺が妃菜の分まで空を育てるから俺が疲れて妃菜のとこに行った時は会えなかった分強く抱き締めてほしい。
俺が行くまでずっと待ってて。絶対妃菜の所に行くから。
寂しがったりするなよ?誤解しやすかったお前は天使になってもやきもち妬いたりするんだろうな…。でも安心して。
会えなくなったとしても俺は今でも妃菜だけだから。
妃菜…愛してる…。