短足
ため息
私はいつも損をする。

大きなため息をつく。

「林田さん、営業事務の仕事入ってるんですが、ご検討いただけませんか?」

携帯がルパン三世の曲を奏でている。


派遣会社からの電話だ。

私は、適当な理由で派遣会社からの紹介を断る。

いや、断るのではなく断らなければいけないのだ。

以前も、その前々回も派遣先の春日局にボロクソにいじめられた。

さすがに、三十路過ぎの人間には何かしら問題のある派遣先しかまわってこない。

断ることも出来ない性格で、ズルズル押しの強い営業マンに押し込まれ、春日局につくり笑いをする余力も最近はなくなってきた。


留守番に入っていたメッセージを聞き、いざ派遣会社に電話。


「ハートスタッフの田中です。」

いつものやたら、テンションだけ高い声。

押しの強い営業マンの声だ。


「林田です。田中さんですか?留守番の仕事の件で電話したんですが。」

「林田さん、いやぁ、なかなか捕まらなくてご自宅の方にお電話しようと思ってたんですよ。」


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