* 恋する猫 *
野良猫と月
太った野良猫が
退屈そうに月を見上げている
月明かりだけじゃあ
君の足跡探せられなくて

太った野良猫が
バカにしたように笑った気がする
月明かりに濡れた大地を踏み締めて
此処を後にする

太った野良猫は
月に照らされて髭を震わせる
月明かり頼りに街を手探り
君の欠片を見つけるために

太った野良猫が
月の形に丸まって寂しく声を上げた
月明かりで作られた影の奥から
君の涙落ちて

太った野良猫は
誰を想い月を見上げているんだろう
月明かりの中で
僕らが探している人は一人の大切な人

太った野良猫の
草臥れた首輪が月に反射
月明かりの下で見た汚いローマ字は
君と同じ名前だったよ

太った野良猫が
退屈そうに寂しそうに
月を見上げている
月明かりだけを頼りに
どうにか君の足跡を探す僕は滑稽

でも太った野良猫は僕を笑わない
‘バカだな 無駄なのに’
そう言いながら太った野良猫は
無駄なことを止めず
月明かりの下で
誰かを待ち続けているんだ
‘諦めるな お前も’

太った野良猫が
退屈そうに月を見上げている
月明かりだけじゃあ
君の足跡探せられないよ

夜が明けたら逢いに行くよ
足跡見えるから
だからもう少し
太った野良猫と君を探して
月明かりに照らされて
髭を震わせて 声を震わせる
月が太陽で見えなくなるまで
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