この話にはまだ、題名がない。
「どうしたの」
後ろから声がしたので、私は振り向いた。
「麻里子」
私の隣の席の麻里子が話しかけた。
「誰か待ってるの?」
「え、えぇ。竹内くんを・・・」
私はまだかまだかと待っていた。
「え? 幸菜は水沢くんの方なんだと思ってたわ~」
「そういう意味じゃなくて・・・」
「ま、隠さなくていいって!」
麻里子はお構いなしだった。
「や、違うんですけど」
「う~ん。竹内くんはいつも遅刻だから、もっと遅いと思うよ~」
麻里子は構わず、話を終えた。