2匹の蝶々
「ねえ、おかあさん」
「んー?」
お風呂でお母さんに髪を洗ってもらってる時に、あたしは聞いた。
「いんって、あたしのこときらいなのかなあ??」
「なんでー?」
鏡越しにお母さんはあたしを見る。
「だってね、いんおかしいの。すきっていうのに、おふろはいってくれないし。キスしてくるし。いじわるなのかなあ??」
「っ…」
お母さんは手を止めた。
「おかあさん?」
「心まで…そんな事、言わないでちょうだい。」
「…え?」
お母さんは泡のついた手で、あたしを抱きしめた。
「お、かあさ…」
「心は。音を弟として好きよね?」
「うん」
あたしは小さく頷く。
すると、お母さんは手を離してシャワーを出した。
「なら、いいのよ」
シャーッ
シャワーの音が虚しく響いた。
あたしは、この時。
何も知らなかった。
お母さんの言葉の意味も。
音の行動も。
何もかも、理解出来なかったんだ。