恋愛一色
俺は下を向き、俺の前を通っていく人たちの足元を見ていた。



待ちたくない。

だって俺の両親は俺を捨てて一度も会いに来てはくれなかったから…



また余計なことを思い出してしまったようだ。


俺は首を横に数回振り、小さい頃に経験した苦い思い出を消した。



すると向こうから真美が走ってこちらに向かってくる。

真美を見て、何故か俺はほっとした。




『響!ごめんね?かなり遅れちゃって…』



『ううん。いいよ。女の子だもんね』



女の子は支度する準備がとても長い。

このことを知ったのは女の子と沢山関わりを持ったときに知った。


だから俺は真美に怒ったりはしない。



真美は少し乱れた髪の毛を手櫛で直し、僕を笑顔で見た。



『行こっか。どこいく?』



『えっとね~』



俺達は駅を離れていく。
そして大きな交差点て信号が青になるのを待っていた。


そして少し経つと、信号が赤から青になる。


俺達は歩いていく。
丁度中間あたりに来たところだろうか。


俺の足が歩くのを止めた。


『響?』


『…千尋…』


何故ならば、目の前には眉間に皺を寄せ、こちらを見ている千尋の姿があったから─…
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