恋愛一色
歩く人たちの動きがスローモーションのようになっていく。


ゆっくりと、動いていく。


だが俺の心臓はバクバクと五月蝿く鳴っている。

『…千尋…』


千尋が一歩、また一歩と俺に近づいてくる。


俺は一歩、また一歩と後退りしていく。



逃げなければ。


『響?どうしたの?』


真美が不思議そうに俺を見る。



すると信号が点滅をし始めた。


やばい…



『響、どういうこと?』



千尋は歩幅を大きくし、俺との距離を縮める。



もう…逃げられない。


『え?』


真美は目を丸くして千尋を見る。



千尋は真美を見上げ睨んでこう言った。



『響は私の彼氏なんで』


俺はごくんと生唾を飲む。


こういう光景を何度か見たことがあった。


そう、ドラマのワンシーンで。


これが俺が初めて体験する修羅場だった─…
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