恋愛一色
しばらくして、俺はさなの唇から自分の唇を離した。



『…ばかじゃん』



『響もね』



俺達は顔を見合わせて笑った。


そしてさなの手を握り、場所を変えようとしたとき、俺は固まった。



俺の目の前には、千尋がいたからだ。



真美と一緒にいたときと同じ、怖い顔をしてこちらを睨んでいた。



『千尋…』



…もう無理だと思った。
もう終わりだと思った…



千尋は静かに口を開いた。



『嘘なんでしょ?私が一番って言ったあの言葉』


どんよりと重い空気が道路全体に漂っていた。



俺はさなの手を離し、千尋に近寄った。


千尋に触れると、千尋は俺の手を祓い退けた。



『ちっ千尋?嘘じゃないって』



千尋はさきほどより鋭い目つきで俺を睨む。



『もう騙されない。私がバカだった。響の嘘に気づいていたのに知らないフリをしていた私がバカみたい』




…は?
なんだって?
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