恋愛一色
俺は千尋が何を言っているのか分からなかった。


知らないフリ?
じゃあ最初から知っていたわけ?



『は?意味わかんねぇ』


『私、知ってたんだ。響が私に嘘ついているって。初めて一緒に寝たとき、響のところに赤い痕ついてたよね?響は私がつけたって言ってたけど、私そんな痕つけてない。ちゃんと覚えてる』




俺は手をぎゅっと強く握り、千尋の話を聞いていた。




『はっ…』


ついに俺はこの状況に耐えきれず、鼻で笑ってしまった。


そして一歩、後ろに下がり、塀にもたれかかった。



『まじかよ…』



さなは黙ったまま、俺達を見ていた。



そして千尋がこう言った。




『…うそつき』



この言葉を聞いて、俺の頭の中の糸が一本切れた。



…うそつき?


俺の嘘に騙されたお前だって悪いじゃねぇかよ。


うそつき?
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