恋愛一色
俺は一度もさなの方を見ずに、帰って行った。


千尋が言った言葉が離れない。


嘘って分かっていたなら教えろよ、言えよ。


そしたら俺の罪が増えなかったかもしれないのに─…



家に着くと、俺は電気もつけずに、真っ暗な部屋で何も考えずに、ただ横になっていた。



俺の中が空っぽだった。

こんなことになるなんて…予想していなかった。



『うそつき』


頭から離れてくれない。
消そうとして頭を殴るが、消えてはくれない。



自分の無力さが、形となって目から涙が落ちてきた。



『…なん…で』



自分がついた嘘が、自分を今こうして苦しめている。



嘘は…最終的に自分を苦しめるなんて知らなかった。




『ごめん…千尋…さな…真美…』



この言葉は俺にしか聞こえない。

謝っても謝りきれない。


でも言わせて欲しい…




ごめん…
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