恋愛一色
やはり先生を見ると、また鼓動が速くなり、息がうまくできなくなる。



自分の自己紹介ですら、何を言ったのか覚えていない。


それだけ、俺は先生に夢中だった。


気がついた時には、もう全員の自己紹介が終わっていた。



『みんなありがとう!少し時間がかかると思うけど、ちゃんと覚えていくのでお願いしますね!』


先生が笑顔でこう言った。



…俺の名前を一番最初に覚えてよ。ねぇ…



俺が密かに願ったこと。叶うときは来るだろうか?


来てほしいよ、来てよ。初めてなんだ。

こんな気持ち…



俺は下を向いて心臓を抑えた。


ドクンドクンと鳴っている心臓。



…なんなんだよ…これ…



─キーンコーンカーンコーン…


教室全体に学校のチャイムが鳴る。
中学のときとは少し違うチャイムの音。


俺を現実の世界へと引き戻した。




『あっこれで今日の学校は終わりです!また明日ね。さようなら』



先生は最後に微笑んで、教室から出て行った。
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