恋愛一色
俺は遥斗が笑っているところを見たことがなかった。



小さい頃から遥斗は一度も笑ったことがないだろう。
楽しいことがあっても、面白い会話をしていても、遥斗は笑わない。


俺…お前の笑った顔が見たい。




『遥斗…そろそろ笑えよ、いつまで笑わないつもりなんだよ…お前の笑顔…お前と出会った時から見たことねぇし…』



駅に向かっている途中、俺は思い切って遥斗に聞いてみた。



遥斗はゆっくりと振り返り、俺を見た。




『笑え?バカ言うな。俺は笑う資格なんてねぇよ』




…笑うのに資格とかいるのか?
いらねぇだろ?



やっぱり過去を気にしているのか?




眩しいくらい光を放つ太陽が、白い大きな雲に隠れてしまい、道路や、街から光が消えていく。



少し薄暗くなった街。



俺は遥斗を見つめた。




『忘れろよ!過去なんて!俺は忘れられた。今があればいい』
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