恋愛一色
部屋に戻り、制服に袖を通す。

まだ慣れないネクタイを結び、上からブレザーを着、腰でズボンを履けば完成だ。



俺は乱れた布団を簡単に綺麗にし、カバンを持ち、下へと下りて行った。



『おはよ、母さん』




『響、おはよう。牛乳?それともコーヒー?紅茶?』




『コーヒーでいいよ』



俺は母さんに挨拶をし、自分の椅子に座り、コーヒーができるのを待った。



父さんは相変わらず出張が多く、あまり家には帰ってこない。



そんな父さんを心配した母さんは、少し窶れた気がする。




『はい、出来たわよ』



母さんが入れ立てのコーヒーを俺の前に置いた。


『ありがと』




くるくると渦のように回るコーヒー。



俺はそれをずっと見ていた。



コーヒーの中に吸い込まれそうで…

また暗い世界へ連れていかれそうで…



少しだけ怖くなった。
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