恋愛一色
綾の感じている声より、先生の声が聞きたい。


綾の色っぽい顔より、
先生の笑顔が見たい。



変わったのはこれくらいかな?

初めて人を愛することができたぐらいだろう。

きっと…



─…正午になる少し前、俺たちはホテルから出た。


乱れたベッドを綺麗に直し、綾が料金を払って、俺たちは外へ出た。



外に出た瞬間、春なのに、冷たい風が吹いた。



その風は俺の心をさらに冷たくした。




『響、今日はありがとう。嬉しかった…もう連絡とらないから。じゃあね』



綾はその風と同じぐらいの速さで俺の前から姿を消した。



結局お前は自分の欲求を誰かに満たしてもらいたかったんだろ?



俺は心の中でこう思いながら去っていく綾を見つめた。



人通りが少ないホテル街に取り残された俺。



ため息をひとつ漏らし、家へと帰って行った。
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