恋愛一色
先生に話しかけようとしたが、俺は声が出なかった。


なぜならば、先生は下を向いて涙を流していたから。



先生は俺の存在に気づかず、俺の横を通り過ぎていった。



俺はその場に止まり、後ろを振り返る。



小さな先生の背中が、とても切なく…俺の心を痛くした。



『先生…』



俺にぶつかる人々。
そのたび、俺の体はよろける。



もうすぐ信号が変わるという知らせの音楽が流れる。



先生との距離がどんどん離れていく。



俺は、自分の気持ちに素直になった。


素直な気持ちを尊重して、行動した。



『先生っ…』



人混みを掻き分けて、先生の後を追う。



そして、その中から先生を探し、先生の腕を掴んだ。




先生の体がびくりと飛び跳ねる。



『えっ…沢村…くん?』


先生は驚いた表情を見せて、俺を見上げた。



ゆっくりと先生の目から涙が頬を伝う。
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