恋愛一色
遥斗は俺を睨み、俺の頭を指差した。



『…んだそれ、キモい』


髪の毛のことか?
俺は髪の毛を触る。


髪の毛が雨に濡れていて、ぺたんこになっている。



『うるせぇって!』



俺は必死に髪型を直すが、ワックスでベトベトになった髪は、なかなか言うことを聞いてくれない。


立たせても、すぐに元に戻ってしまう。



…ありえねぇ…



『ははっ…』



すると、誰かの笑い声が聞こえた。


今駅にいるのは、遥斗と俺しかいない。


俺はゆっくりと顔を上げ、遥斗を見た。



『遥斗…お前…』



『あ?』



『お前…笑ってんじゃん…』



遥斗が…笑った?
嘘じゃないよな?嘘なわけあるか。


さっきの笑い声は遥斗の声だ。



遥斗が初めて笑った。

俺が初めて見る、遥斗の笑顔。



想像以上にやばいよ?



遥斗が笑った瞬間…
朝と同じ黄色の太陽が雨雲の隙間から顔を出した。



…そして翌日、最高の日となった。
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