恋愛一色
ねぇ、君を奪ってもいい?


先生の温もりが、先生の匂いが、先生の感触が…


俺にゆっくりと伝わってくる。



静かな先生の部屋に、時計の針の音が響き渡る。

その針は、とてもゆっくりで…


もう少し遅くしてよ─…?


俺はまだ先生を感じていたいよ。



『沢村君?』



『ねぇ先生…俺じゃだめ?俺、先生がすげぇ好き。やばいくらい好きなんだ…』



俺は更に抱きしめる力を強くする。



『沢村…君…』


先生の声が弱々しくなっていく。



『先生…好きです…』



俺は唇を噛み締め、もう一度先生に気持ちを伝えた。



先生は俺の胸に顔を埋め、鼻をすすった。


きっと先生は泣いているのだろう。


俺は気づかないフリをしていた。
もし、ここで先生に『大丈夫?』だなんて言ったら、先生は強がってまた笑顔を見せるだろ?


強がって欲しくないよ。

泣きたいなら、泣けばいいさ。
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