恋愛一色
俺はただ長い廊下を歩いていき、洗面所に向かう。



そして鏡の前で暫し自分とにらめっこ。



あちらこちらに散らばった髪の毛。


少し剥くんだ顔。



俺は冷たい水を出して、顔を洗う。


リセットするために。



顔を洗い終えると、棚からワックスを取りだし髪の毛を整える。




『完璧!』



俺は鏡の向こうの自分に笑顔を見せた。


鏡の自分も俺と一緒に笑顔を見せる。




『はぁ…』



最近の俺はため息ばかり溢す。


こんな自分に不満と感じているのかもしれない。



俺も遥斗のように、世界を憎んでいたら…笑顔を見せなければ…俺は変わっていただろうか?




『響!遥斗君が迎えに来たわよ!』



『はぁ~い…』




もし俺が遥斗のようになったとしても、遥斗みたいにはなれない。



だって俺は、罪を平気で犯す人間なのだから──…
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