恋愛一色
人の恋愛に邪魔をするのはいけないことだ。
だから俺は綾を許せなかった。


ましてや遥斗のように一生懸命、人を愛しているのに、頑張っているのに、邪魔をするなんて…

俺は許せなかった。



幼なじみを睨みつけ、俺は遥斗が口を開くのを待っていた。



『葵と付き合ってるんだろ?』



でも遥斗から出た言葉は意外な言葉だった。



『え?』


菊地唯がこう言うのも無理もない。

俺だって『え?』と思ってしまう。



遥斗が零れ落ちた言葉たちは、全て偽った言葉たちだった。



『俺…すげぇ似合ってると思う。唯と葵』



遥斗は静かにこう言って、雨の中傘もささずに走り去って行った。



『遥斗!!ちょっ待てって!』



俺は遥斗の傘と俺の傘を持って、遥斗の後を追いかけた。



跳ね返る泥。
濁った水。




遥斗の強がり…



俺にも痛いくらいわかるよ─…
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