恋愛一色
遥斗は恐らく自分の気持ちを見失っているだろう。


きっと…本当の気持ちに。


だから俺は問い詰めたんだ。
杏ちゃんのクラスから自分たちのクラスに帰るときに。



『遥斗、お前はそれでいいのかよ?』



俺は先に歩く遥斗の頭を睨んで言った。


遥斗はこくんと頷く。



『いいんだよ』


俺は遥斗の肩を掴み、引き止めた。


『よくねぇだろ?!お前、菊地は?もうどうでもよくなったわけ?』



廊下に響いていく、俺の怒りの声。



『唯には葵がいるじゃねぇか…』



遥斗は小さな声で言う。

それってただの言い訳なんじゃねぇの?
それで…お前は諦めるのか?


俺はとうとう怒りが我慢出来なくなったのか、遥斗の両肩を掴み、壁に押し当てた。




まだ夏には早い季節。
梅雨はもう終わりかけだったけれど、遥斗の心の中は土砂降りだった。
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