恋愛一色
遥斗の口から零れた言葉は、俺の胸を痛くした。



『…好きじゃねぇよ…』


俺は遥斗の肩を揺らし、何回も壁に打ち当てた。

嘘だと言ってくれよ…



『じゃあ今目の前に菊地が現れたらお前はどうなる?お前のここ…動くだろ?』



俺は遥斗の右胸を指差した。
その先に眠っているのは…人間に必ずあるもの。人間に必要なもの。


心臓だ。


遥斗はもうわかるよな?好きな人を見たら、心臓が煩く鳴り出すって。


分かるよな?
鼓動が速くなるって。



込み上げてくる涙を必死に抑え、遥斗に訴えた。


『俺には…無理だ』



遥斗は何に意地をはっている?
素直になれよ。
一番わかってるのは遥斗、自分自身だろ?




廊下を吹き抜けていく涼しい風。
静かすぎる廊下。


そんな場所には、悔しい自分と、素直じゃない遥斗がいた。
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