恋愛一色
『大事な人が誰なのかようやく分かったよ』



こう言って、窓から空を見上げた。


その言葉を聞いた俺は、嬉しくなり、前を向き直した。



『ふーん、やっと分かったのかよ。おせぇし、バカ遥斗』



やっとわかってくれたか。
遅いんだよ。
でも良かった…失う前でさ。



俺も遥斗と同様に、車窓から空を見上げた。



空には三日月が浮かんでいて…まるで笑っているように見えた。



…美幸は車を走らせるだけで、どこに向かっているか検討もつかないでいた。



『先生、どこに向かってるの?』



美幸は信号が赤になったのを確認し、車をとめた。


そして遥斗の方を向く。


『橘君?今…菊地さん大変なのよ…』



『唯に何があったの?』


静か空気が車の中を覆っていく。



『菊地さんのお父さんが入院しちゃったのよ…それでお父さんの看病であまり学校に来れないの…』



そうだったんだ…
だからあまり学校にも来なかったんだ…



『それで菊地のお父さんは大丈夫なわけ?』



俺は勇気を出して美幸に聞いてみるが、美幸はただ頷くだけだった。
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