恋愛一色
だって初めて一目惚れしたんだよ?
初めて本当の恋をして、初めて愛している人と体を合わせて…


なにもかもが初めてで緊張はしたけれど、それでも大好きなんだ。

今も、今も─…



『沢村君は、優しいからね?』



菊地は優しくこう言って、俺の頭を撫でてくれた。


菊地の優しさが俺の涙のスピードを速くしていく。



『…優しくなんか…ないよ…』



『優しいよ?でもね、逃げてばっかりよね?』



菊地の言葉を聞いて俺は何かに気付かされる。


確かに…俺は逃げてばっかりだ。
美幸に別れを告げられるのが怖くて、俺は逃げていた。



菊地の手から感じられる暖かい温もりが、すごく心地がよかった。

少しだけ、遥斗が惚れた理由が分かるかもしれない。



『怖いんだ、なんか…』


涙を指先で祓い、菊地を見上げた。


菊地は笑顔で俺を見てくれる。




『怖くないよ、大丈夫。沢村君なら出来るよ』
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