恋愛一色
『分かんねぇだろ?聞いてみないと分かるわけねぇって。一回聞いてみろよ』



俺は立っていることが出来ずになり、その場にしゃがみ込んでしまった。

ひんやりと若干冷たい廊下。
その上に涙が落ちていく。


こんな姿を他人に見られたくない、と思い、俺は顔を隠した。



『怖いんだよ…美幸に何言われるか…怖いんだよ…』



『響…』


もし美幸に『また付き合って欲しい』と言ったら、だめと言われそうで怖いんだ。


『好きだ』と言ったら、嫌いと言われそうで不安なんだ。



遥斗には分かるか?



夏はあまり風は吹かない。
俺の足を進めてくれるのは風なのに、今は風力…ゼロ。


前に進めないでいた。



『怖くても聞けよ。逃げてばっかりじゃ後悔するだけだぞ』



俺は何も言わず、遥斗の言葉に耳を傾ける。



『響はそれでいいわけ?そのうち先生に彼氏が出来たら、お前は辛いんじゃねぇの?今を大切にした方がいいんじゃねぇの?なぁ?』



遥斗のひとつひとつの言葉が俺の胸を突き刺す。

遥斗が言っていることは間違ってはいない。
むしろ当たっている。



でも…足は動かない…
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