恋愛一色
泣いたっていいじゃないか。
弱くたっていいじゃないか。


いつか泣いた分笑えば、いつか弱った分強くなれば。



俺は蒸し暑い世界を走る。


アスファルトの照り返しで眩しくなった道を走る。


いつもは煩い蝉の鳴き声だって今日は応援歌に聞こえる。



『…待ってて…』



俺は美幸の家を目指す。
そんな俺を不思議そうに振り返る人々。
信号無視をした俺にクラクションを鳴らす人。



額から汗を数滴流し、長袖のカッターシャツを腕まくりし、走る。とにかく走り続けた。



…そして…とうとう着いた。
君の家に─…



俺は一旦呼吸を落ち着かせ、インターホンを強く押した。



─ピーンポーン…



流れ出た汗を手で拭き取り、美幸が現れるのを待つ。




『─…はい?』




中から聞こえてきたのは少し鼻声の君の声…





『…美幸…』




君は驚いた顔を見せて俺の名前を呼んだ。





『響…くん…』
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