恋愛一色
街はもう夏真っ盛りだ。あちらこちらのお店に水着や浮き輪が売っている。


俺はこのくそ暑い中、賑わしい駅の前で立っていた。


そう、今日は日曜日だ。美幸が答えを出す日。
昨日美幸から《10時に駅前にきて》とメールが送られてきた。
俺は何も考えずにここまで来た。

考えると、苦しくなるから。悲しくなるから。


俺は視線を足元に落として美幸を待っていた。



あの日、美幸の看病をしていた日、俺は美幸に想いを告げてすぐに帰って行った。
そして早朝に家を飛び出し遥斗の家に向かい、報告をした。


俺はその時、遥斗に嘘をついた。


美幸とうまくいったと言ったが、あれは嘘だった。
遥斗にあまり心配させたくない、という俺のちょっとした心遣い。


遥斗には、菊地との恋に集中して欲しかったから。


遥斗は今日、菊地とデートらしい。



付き合えるといいな、と心の中で願った。
< 283 / 313 >

この作品をシェア

pagetop