恋愛一色
だってそうだろ?
美幸は俺のことを一番に考えてくれていたから別れを切り出した。
もし自分のことを一番に考えていたら俺の将来より自分自身の将来を心配するだろ?

でも美幸は違った。
自分の将来より、まずは俺の将来を考えてくれていた。



俺はそれだけで十分に嬉しい。



『…美幸、嬉しいよ。俺のこと、そこまで考えていてくれて』



『響君には私なんかよりもっと素敵な人の方がお似合いよ…』



美幸がこう言うと、美幸のアイスコーヒーについていた雫が一粒落ちていった。



『…美幸…ありがとう…今まで…』



本当は別れたくないはずなのに、俺の口からは別れの言葉が出ていた。



『私もよ…響君に会えて本当に良かった…』



美幸は指先で涙を祓い、最後に笑顔を見せてくれた。




『…もう美幸って呼んじゃだめだよな…先生って呼ばなくちゃ…』





ねぇ、何故かな?



涙が出てこないんだ…
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