恋愛一色
最近まで涙は勝手に流れていたはずなのに、今は流れていなかった。


悲しくないのかな?


いやきっとこうだ。
悲しいより嬉しいが大きいからだ。


きっと──…



もうお昼に近いのか、喫茶店には人がたくさん溢れていた。



『美幸、先に行って…』


俺は下を向き、美幸に命令をした。



美幸は黙ったまま、俺の命令に素直に従い、立ち上がった。
そして伝票を持って、レジへと体を向ける。




俺は口を噛み締めて下を向いていたが、顔を上げて美幸の背中に向かってこう投げかけていた。




『…美幸にとって俺との恋は辛い恋だった?』




美幸は足を止め、俺の方を振り返らずに静かに言った。







『…最高の恋だった…』







その言葉を聞いた瞬間、一気に涙が零れ始めた。


涙で視界が歪む中、俺は美幸の背中を見つめていた。
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