恋愛一色
美幸の言葉で、恐怖感が一気になくなった。




『…あとひとつだけ…
美幸は俺のこと好きだった?』




涙はまるでこのレモンティーのグラスのように俺の頬を流れ落ちていく。


美幸は顔を上げて震えた声で俺の質問に答えてくれた。






『…精一杯…あなたを愛していました…』






更に速く流れる涙。
俺はその涙を拭かずに流すだけ。




『…サヨナラ…先生…』



美幸はまた歩きだし、喫茶店から出て行った。





…これが美幸を見た最後でした──…






俺はしばらくその場所に座ったまま、美幸の飲みかけのグラスを見ていた。
完全に溶けた氷。
水滴は全てテーブルに落ちていた。



俺は美幸との思い出を思い出していた。



美幸との…恋愛を─…




美幸が言った言葉が離れない。
グルグルと廻っている。





俺も…美幸を精一杯…




愛してました。
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