恋愛一色
その落ちていく髪の毛を俺は寂しそうに見つめた。




『…好きです。大好きです…』



『俺もそうだった。好きなのに百合を離してしまったから』



思い出した。
百合とは光輝さんの彼女だ。



『離した?』



『約束したんだ。百合にふさわしい男になるまで頑張るって』



『…ふさわしい男…』



俺は小さく呟いた。



『響君は知っているかな?人は誰かの色に染まるって』




『誰かの色?』



俺は不思議に思い光輝さんを見上げたが、『前向いて』と注意され直ぐに前を向き直した。



『そう、その色はね、愛している人の色なんだ。例えば俺は百合の色。響君は誰の色か考えてみて?』




俺は目を閉じ、光輝さんに言われた通り、誰の色か考えた。



思い出されるのは、美幸の仕草や、美幸の笑顔。

そして美幸の言葉…


俺の中は未だに美幸でいっぱいだった。
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