恋愛一色
俺はゆっくりと顔を上げると、そこには少し膨れた顔をしている千尋がいた。



『…あっ千尋…おはよ』



俺はそんな千尋に向かって笑顔を見せた。


だが千尋はこんな俺に余計腹が立ったらしく、俺にまた一歩近付いた。



『昨日何してたの?私ずーと連絡待ったんだから!』


物凄い迫力で千尋は怒ってくる。

一瞬、千尋の後ろに鬼が見えた。



…やばい…
俺は一歩後退りをした。



『昨日さ!帰ったらあと幸せすぎて寝ちゃったんだ!朝…メールを見てさ…今日謝ろうとしたんだ』



俺はとうとう逃げる場所がなくなってしまった。

背中に当たるのはひんやりと冷たい壁。



下を見下ろすと口をヘの字にして怒っている千尋。


冬なのにじわじわと汗が溢れてくる。



『本当?』



『本当だよ?これあげるから許して?』



俺は学ランのポケットから飴玉2つ取り出し、千尋に差し出した。
< 58 / 313 >

この作品をシェア

pagetop