恋愛一色
俺は千尋の手を離し、自分の席に向かう。



『なぁ!響!お前ついに?』


興奮しながらその場にいた和馬が話しかけてくる。



俺はにやりと笑い、ピースサインを作った。


『お前すげぇなぁ!』



『変なことすんなよ?』


隣にいた淳が雑誌を見ながら言ってきた。



俺はマフラーを取り、淳に肩を組んだ。



『それは分からねぇな?俺手ぇ早いから』



淳の耳元でこう囁いた。

淳は横目で俺を見て、白い歯を見せて笑っていた。


ふと千尋の方を見ると千尋も俺と同じで、クラスの人達から事情聴取されているみたいだ。


照れくさそうに笑いながら俺とのことを話す千尋を見て、俺はまた怪しい笑みを浮かべた。



『…俺のもの』



小さく呟いた俺の独り言は和馬や淳には聞こえていなかった。



俺は席に座り、曇った汚い空を眺めた。
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