恋愛一色
千尋が俺から去っていくと、俺はすぐに笑顔を消した。



めんどくさい。



『いいなぁ~響は。平松に誘われてさぁ!』



俺の前で悔しそうにしているのは和馬だ。




『そうか?てか何で俺なんだろーね?』



『お前がかっこいいからじゃね?』



…かっこいい?俺が?



この頃の俺は、お洒落に気を使っていた。


ワックスで髪を立てたり、ズボンを腰で履いたりと、目立ちたかった。


中学二年生には見られたことがなかった。



だからか?



でも遥斗の方が俺より遥かにかっこいい。


俺は遥斗になりたかった。



『日曜日なにしようかな?』



俺は頬杖をつき、怪しい笑みを浮かべた。



『うわっ響の裏の顔が出たし!』



俺は仲が良くなった人にしか裏の顔を見せたことがない。




表と裏がある人間なんだ。
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