the age of civil war

「お食事をお持ちいたしました。」
さきほどのメイドが部屋を三回ノックし、ゆっくりと扉を開け、台車を押し、中に入ってきた。
そこには見た事もない美しい作品が広げられている。
「…。」
二人はひたすらその料理を見つめ続けた。
これは食べれるのか？
ウィンダムは、正式名称ウィンダム王国である。つまり王政だ。先ほどの女は王家の人間で、ちなみにここは王家の家、城である。食べ物もフランス料理のように美しく盛り付けられている。食べ物としてではなく、その作品に二人は魅了されていた。あんな事があった後だ食欲があるはずはない。
メイドはその二人の反応に、たじたじになっていた。
「しっかり食って、よく寝るといい。」
またカツカツと女が入ってきた。どう接したらいいかわからないが、二人が心配ではあるらしい。
「まずはゆっくり休むべきだ。その後の事はあたしが考えておく。」
女は、部屋にあった椅子に腰かけた。
タケルとクロスは、キラキラと光ってみえる料理をまだ見つめている。
「腹減ってないのか？それとももっと軽いのがよかったか？」
女が心配する。見た目とは違い優しい女のようだ。
クロスは、そばにあるフォークでぐさっと料理を突き刺し、次々に口に入れた。
「クロス。」
タケルは、その機械のような動きに戸惑った。いつもなら食事の時、とても美味しそうに食べる。何やら無理やり押し込んでいるような気がした。
タケルは食欲がまったくない。そのガツガツ食べるクロスに黙りこんでしまった。
「…。」
女もその光景を黙って見つめている。
「タケル、私たちいつご飯が食べられるかわかんないんだよ、もう。食べれる時に食べなきゃ。生きなきゃいけないんだから。」
クロスはタケルの顔もみず、機械運動を繰り返した。
タケルは涙が込み上げてきた。クロスが狂ってしまっている。実際、その通りであろう。住む所をなくした二人は、次いつご飯を食べる事ができるのかわからない。しかし、クロスのこれは異常である。
あのおっとりとしたクロスが…
あのいつも笑っていたクロスが…
タケルは、しぶしぶフォークに手を伸ばし、小さくきった芋を一口、口に入れた。
美味しいとは感じられなかった。