the age of civil war

「あたしがオヤジにたのむからさ…この国に住みなよ。種族はちがうけど…ここでゆっくり養生すればいいよ。」
女は、二人の重苦しさを察知した。
苦しんでいる。
無理に自分を高めようとしている。
二人を見つめ続けた。
「私は、いなくなった姉を探さなければなりません。」
機械のように口を開く。手を止める事もない。
タケルは、あいかわらずスローペースで食事が進んでいる。
「姉？」
あの時間帯だ。すべての村の者達は殺されたものだと思っていた。この二人は傷や火傷の浅さからしても、その場にいなかったのであろう。何故かはもちろんわからないが。
「あの中に姉の姿はありませんでした。姉は必ずどこかで生きているはずです。」
するとクロスは手をとめ、ガタッと立ち上がり、女の方にズカズカと歩いていった。
「顔は私と似ていませんが、茶色い長い髪をまとめた姉を知りませんか！？きっと辛い思いをしています！！」
女の体をつかみ、ユサユサと強く揺さぶり叫ぶ。
「ホワイト様！」
メイドがあわてて止めに入る。
「姉は、ここにはいませんか！？ねえ教えて！！」
クロスは目をむき出し、止めるメイドなど目に入らない様子で、ひたすら強く女を揺さぶり続けた。
目の前に広がる料理をひっくり返し、タケルも慌てて止めに入った。
「落ち着け！落ち着けクロス！」
クロスは腕をつかまれても、バタバタと暴れた。
「お姉ちゃんが！！お姉ちゃんが！！」
必死に制止するタケル。
「ゴメン！！」
そう言うと女はクロスの頭に手をのせ、何やら力を込めた。
「お姉…ちゃん…。」
瞬時にクロスは眠りにつき、ガクッと崩れ落ちる体をタケルは支えた。
「何を！？」
タケルは、急に恐怖を覚えた。どこかで体験した、いやあのとき体験した魔法の様な気がしたからだ。
「ゴメン。眠らせた。彼女の精神状態は極めて悪すぎる。落ち着かせるのに、他に方法が思いつかなかった。」
女はしゃがみ込み、クロスの顔を見つめながら、タケルに詫びた。
クロスがスースーと寝息を吐く。
タケルの恐怖はすぐには拭えなかったが、これが最善の策であったであろうコトは認識できた。
「ゴメン。この国に、他の国の人間が訪ねてきたという連絡は入ってないんだ。あたしも、もしかしたらと思って聞いてみたんだけど…。ゴメン。」