the age of civil war

そう言った女の顔が本当に申し訳なさそうで、タケルは女を攻める事をこれ以上はできなくなった。
「あたしはホワイト。一応この国の王家の人間だ。困った事があったらすぐに言ってくれ。ドアの外にいつでもメイドを立たせておこう。」
ホワイトは立ち上がった。
「クロスは…クロスは…もとに戻りますか？本当はこんな奴じゃないんです。とても穏やかで…一緒にいるだけで安心できるようないい奴なんです。」
タケルは、クロスを支える手にギュッと力を込め、ホワイトを見上げ尋ねた。
「…。」
黙るホワイト。タケル、クロスを正視できない。
「クロスはさっき、あの男が許せないって復讐心に捕らわれてた…あの誰にでも優しいクロスが…そりゃ俺だって許せねえよ。できるならあいつを殺したいと思う。でも、何にも知らねえ。あいつがどこの人間で何をしてる奴なのか…俺らはこの世界の事も知らねえ。どうしたらいいのかわからねえんだ。」
タケルの目に涙が込み上げる。口を開けば、言葉がポロポロとこぼれ、止められず、ただただ弱さを吐き出す。
「お前らみたいなガキが人を殺したいとか言うなよ。」
ホワイトの目にも涙が込み上げてきた。
その表情を見て、タケルの言葉が止まる。
「そりゃ大事な人間を失った気持ちは、あたしがいくら想像しようともできないよ。お前らの気持ち、わかりたくてもわかる事なんてできないよ…。でもな…。」
ホワイトも涙を次々とこぼし、またしゃがみこみ、タケルの目を見つめて言った。
「そんなお前らだからこそ、これ以上辛い思いなんてさしたくないと思うんだよ。人を殺すとか言うなよ。それじゃあ結局気持ちなんて晴れないよ。その命の重さにまた苦しむんだよ。」
ホワイトは、涙をたびたび手で拭い、綺麗な化粧が落ちていくが、それでも涙は止まらなくて、ワンワン泣いた。
タケルは不思議だった。
なんで、この人は泣いているんだろう？
この人は初めて逢った人なのに、どうして自分達の事を涙を流し、心配しているのだろう？
タケルは、キョトンとしてしまった。
「ホワイト様…。」
メイドはどうしたらよいかわからず、アタフタしている。
「なんで…？」
タケルの疑問が口から出た。
ただ疑問だった。
ホワイトという人間が不思議で仕方なかった。