the age of civil war
しばらくすると、クロスが静かに目を覚ました。
二人が去った後、タケルはクロスを抱えベッドに戻し、その横に転がりボーっとしていたが、やはり安心したからか、村を思いすぎ、頭がおかしくなりそうになるなどという事はなかった。村の事は頭から離れない。しかし、それを冷静に受け止めようとしていた自分がいたのだ。
「起きたのか?」
クロスは、まだ少しまどろみの中にいるようだが、静かに頷いた。
「クロス、俺はもう大丈夫みたいだ。あとはクロス次第なんだけど、これからの事考えようか。」
タケルは、ゆっくりと言い聞かせるようにクロスに優しく話しかけた。
「…。」
クロスの目に涙が、海のように溢れる。
「まだゆっくりしてるといいよ。俺がいろいろ聞いてくるから。」
まだクロスには無理そうだ。タケルが腹を決めるのが早かっただけだ。タケルは、クロスが壊れるのが怖い。ゆっくり時間をかけていけばいいのだ。大丈夫なものが頑張ればいい。
助け合い。
それを村で学んできたのだ。
ベッドから降り、部屋を出ようとするタケルの服をクロスが引っ張った。
「おいてかないで。」
今は落ちているようで、小声でつぶやくように言った。
「せっかくだから、ここもいろいろ見せてもらおうよ。クロスが眠っている間の話もあるし。」
タケルは、ゆっくりボーっと歩くクロスに歩幅を合わせ、部屋の外に出た。
「あっ、どうされました?」
先ほどのメイドが、目を覚ましたクロスにちょっと戸惑っているようだ。先ほど大暴れした件があるからか、少し警戒している。
「ちょっと歩きたくて。いつまでもここにいる訳にはいかないし、この国を見せてほしいと思って。」
タケルは、メイドの警戒を察したが、まあ仕方ない。とりあえず説明して、長い廊下を歩き始めた。
メイドは、
「かしこまりました。」
と一言言っただけで、何も言わなかった。
まさに城。
二人には記憶がないだけかもしれないが、初めてみる光景である。
村より広い廊下には、緑色の絨毯が綺麗にひかれている。天井から吊らされるシャンデリアは、部屋にあったものとは比べものにならないくらい大きい。廊下にあるガラスのない窓から風が入ってくる。外を見てみると噴水が見えた。中庭のようだった。
「すげえな。なんか。」
タケルは、見るもの見るものに驚きを隠せなかった。
< 27 / 30 >

この作品をシェア

pagetop