君と、サヨナラ。
あの時、俺は下にいた野次馬だった。
誰か落ちてきて、あぁ、遠野(咲子)か…と思って目を凝らしたら。


『あれ?咲子上にいる…?』


という落ちてきた人が見えるよりも、誰かの声が先に聞こえて。
…じゃあ、あの死体は?
そう思ったとき、また声が届いたんだ。


『あれ…!?実…柚!?
あれ実柚じゃないの!?』


実柚は、学年の女子からも男子からも好かれる、人気者だった。

俺はその声を聞き、倒れてる人の元まで駆け寄った。


『み…ゆ』








あの時の咲子の断末魔の叫びと、背中に落ちる冷たい感覚。




何かが失われた空白感を、俺は、はっきりと覚えてる。
























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