七色の糸(仮)
 高谷くんは、明るい性格で頭が良く運動もできて、みんなから慕われている。彼が学級委員長であることは誰もが認めるところだった。

 高谷くんに「ありがとう」とお礼を言いたかったけど、それはぼくの頭の中で繰り返されるだけに止まった。



 移動教室から帰ってきたとき、教室の前の廊下で、隣のクラスの男子とぶつかってしまった。その男子は、別の小学校からの人で名前も知らない。

 咄嗟に振り向くと、相手のほうも驚いた顔でこっちを見ていた。

 ぼくは背が低いほうだったが、彼はもっと小さくて小学4年生と言われても違和感がないくらいだった。

 ぼくは謝らなきゃ、と思っていたのに、突然のことに狼狽えていて、つい目を逸らしてしまった。

 目線を床にやると、自分の教科書類が散らばっていることに気づき、それを拾い上げる作業に移った。

 謝りもせずに、無視したような形になったので、相手にはきっと嫌なヤツだとおもわれたに違いない。気の小さい自分に落胆した。

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