七色の糸(仮)

5 都合のいい友達

「あら、上原君」

 保健室の先生はまた来たの?という顔をした。お腹が痛いことを伝えると、先生は手を振って行きなさいというジェスチャーをした。ここ最近、二人は同じやりとりを交わしていた。

 保健室の真向かいは職員室になっていて、職員用のトイレを使用することができた。ここでは安心して用を足せる。



 保健室に戻り来室表に名前と症状を記入する。今日は午前中に2年の女子と3年の男子が来ていたようだ。

 奥の六人掛けのテーブルに着いた。先生は専用のデスクで今話題のファンタジー小説を読んでいる。

 室内には金魚を飼っている水槽のモーター音だけが響き、遠くのほうからは体育の授業中の生徒達の声がした。ぼくは、息苦しい世界から切り離されたような気がして、少し心が安らいだ。

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