七色の糸(仮)
 頑張って集中していると、やがて暗闇の中にぼんやりと影が浮かび上がった。薄く光っていて、輪郭のおぼろげなそれは、なんとか人の形をしていた。

 少しでも油断すると、光は消えてしまいそうなる。

 ぼくは何故か、定着させるためには名前をつけるしかないと思い、咄嗟に「ペン吉」と名付けた。

 その後、ぼくは疲れてしまい気を抜いたが、影は消えることなく闇の中に立ち続けていた。



 突然、大きな音がした。ぼくは現実に引き戻され、伏せていた顔を上げた。

「失礼します」

 先生は本を閉じて入ってきた生徒をのほう向く。

「どうしたの?」

「ちょっとお腹が……」

「トイレは?」

「あ、大丈夫です」

 入口に背を向けて座っていたが、声変わりをしていない高い声で、同学年の男子だとわかった。ドアを閉める音がした。

 横に来た相手の顔を見て、ぼくは固まった。さっき廊下でぶつかった2組の男子だった。


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