鏡村【短編】
"鏡村"


無駄に長い草を掻き分けて着いた先にあったのは、大きくそう書かれた看板と長い吊り橋だった。


「かがみむら?」


この先300m。


その数字が橋の長さなのか村までの距離なのかはこの場所から知ることは出来ない。


道という道は、この吊り橋とその先に有るであろう道以外他は無い。


もしかしたら皆はこの橋を渡った先に居るのかもしれない、そう思った玲は迷わず橋に足をかけた。


ミシッ。


かなり古いが、橋を構成する物の一つである板は朽ちている様子は無い。


それでも、歩く度に軋む音と吊り橋特有の揺れは絶えず玲の恐怖心を煽った。


自分がいる真下には大きな川が勢いよく流れていて、何十メートルかの高さに足がすくみそうになる。


「大人しく車で待っておけばよかった」


ぼそりと話し、人が1人か二人ほど並んで歩ける幅の吊り橋を慎重に進む。


綺麗に放物線を描くように渡された橋。


一体この先に何があるというのだろう。


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