鏡村【短編】
無事何事もなく渡りきった先に有ったのは小さな村。


此処だと表さんばかりに、大きく看板が立て掛けられており、簡易に出来た木の門が在った。


その脇には歓迎の言葉が綴られた旗がいくつもあり、橋をわたる前に見たあの二文字も目にする。


歓迎の旗なんかあるって事は少なからずは観光客が訪れるのだろう。


玲は何の迷いもなく門の向こう側へと足を踏み入れた。


それにしても可笑しい、私達の車はどこから入って来れたのか。


車が停まっていた周辺には道など無かった。


見えなかった?


もしかしたら私が来た入り口とはまた別の所に正式な入り口があるのかもしれない。


玲はそんな事を考えながら村の中を歩いた。


やけに静かだ。


人ひとり見当たらない。


一戸建ての家がポツポツとあり、畑や田んぼはあるが手入れはされていない。


殺伐とした風景に、急に怖くなった。


"在るはずのない村"


不意に思い出された智治の話。


健人が言った肝試しには最適な廃墟の存在。



.
< 11 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop