鏡村【短編】
「夢じゃないよ」


小さな子の声が、私のパニック状態を一時的に止める。


「誰?」


目の前に小学生低学年くらいの男の子が現れた。


「夢じゃないよ、どちらかと言えば現実、でもお姉ちゃんの思ってる現実とはちょっと違うかな」

淡々と話す男の子。


この村に来て初めて見た人間。


本当に生きてる人間だろうか。


自分を失ってしまいそうになるのを必至で引き止める。


「何を言ってるの……」


「僕、知ってるよ」


「知ってるって何を、何なの此処…あなたはこの村の子?」


「そうだよ、この村の住人」


あどけない笑顔を玲に向けた。


まるで、ここが現実だと思ってしまう程に。


でも、違うんだ。


非現実的な事が確かにあったのだから。



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