鏡村【短編】
「僕が帰り道を教えてあげる」


「え?」


そんなの、そんな言葉信じられる筈がない。


今信じられるのは自分だけ。


「入口があの門だったとしても出口は違うんだ」

そう言って男の子は手を伸ばしてきた。


私は少し後退りする。


男の子はその手の人差し指だけを出して、どこかを示した。


「ほら、もう時間がない」

私はその指の先へと視線を移す。


彼が指差したのはこの村で唯一大きな建物。


病院?


「あの時計の針が合わさったら、帰れなくなるよ」


病院には大きめの時計が設置されていた。


「帰れなくなるって……痛っ」


何?


見ると私の左手から血が出ていた。


いつの間にか私に近付いていた男の子。


その手に持っていたのは鏡の破片だった。



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