鏡村【短編】

気味が悪い程静かなこの村に、耳をつんざく音が鳴り響いた。


「何…」


それは鏡が割れる音だった。


誰かいる。


私は思わず草陰に隠れた。


あの門があった方向から徐々にこっちに近付いてくる。


パリンっ。


ジャッジャリ、と割れて散らばった鏡を踏んで歩く音。


怖い。


“お父さん達が出口を塞いじゃうから”


男の子が言っていたのはこのことだ。


やっぱり、鏡が出口なんだ。


でも、全部探したのに見つからなかったじゃない。


玲は遠くの鏡を割る男を見て何かに気付いた。


男が立って、今割ろうとしている場所には小さな手鏡があった。


鏡が出口なら、なぜ人が通れない程小さな鏡まで割る必要がある?



.
< 21 / 32 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop