鏡村【短編】
気味が悪い程静かなこの村に、耳をつんざく音が鳴り響いた。
「何…」
それは鏡が割れる音だった。
誰かいる。
私は思わず草陰に隠れた。
あの門があった方向から徐々にこっちに近付いてくる。
パリンっ。
ジャッジャリ、と割れて散らばった鏡を踏んで歩く音。
怖い。
“お父さん達が出口を塞いじゃうから”
男の子が言っていたのはこのことだ。
やっぱり、鏡が出口なんだ。
でも、全部探したのに見つからなかったじゃない。
玲は遠くの鏡を割る男を見て何かに気付いた。
男が立って、今割ろうとしている場所には小さな手鏡があった。
鏡が出口なら、なぜ人が通れない程小さな鏡まで割る必要がある?
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