鏡村【短編】
■■

瞼がゆっくりと開く。


「ごめん、いつの間にか寝ちゃ…」


寝ちゃってた、と言い終える前に口が止まる。


居ないのだ。


話しかけようとして見た先には、隣に座って居るはずの彼氏も、後部座席の友達もみんな。


前方にはただ自然が広がるだけ。


どこかの山中。


日差しが木々の隙間から届いているので暗いなんて思うことは無いが、不安は消えない。


みんなどこに行ったのだろう。


玲はクラクションに手を置くと長押しした。


少し高めの警笛が鳴ると、どこからかバサバサと鳥の飛び立つ音がした。


自分が鳴らした音だと云うのに思っていたよりも大きく鳴り響いたので、小さくびくつく。


「みんなどこに行ったんだろう」


クラクションをならしてから数分待ったが誰の姿も見えない。


玲は周辺を見るくらいならと思い、ドアを開けた。



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