近代化
「どうせ冷たい人間とか、酷い人間とか思ってるんだろ」
いじけた声で言うと、龍野はまた笑い
「死のうとしてる人間を止めようとしてる人が偉いってわけではないだろう」
早口なので、最初の部分を聞き逃してしまった。
それでも龍野は続ける
「俺はそういう人間は無責任だと思う」
最初の笑顔は消え、真剣な顔つきで喋っている。
「死にたいほどの苦痛を味わって、それで死を選んだ。
なのにそれを止める人は、面倒を見るのか、と思う」
「…」
龍野は僕の方を見て
「姉の今の状態を見て、思った。
でも助けて医師には感謝している。複雑な心境だよ」
最後にわははと笑った
「だから俺はお前を酷い人間とは思わないよ」
「そうか」
酷い人間とは…か。