蒼空から降ってきた少女
第一章 転校生
黒、いや、見上げるほど群青、そして更にその上はもっと明るい青、空気に触れる所までくれば、キラキラと輝きを放ちながら揺れているのだろう。
僕は海の底にいた。
光と影のグラデーションに包まれてとても幻想的な空間だ。
多少動き辛いが、何故か呼吸は出来てしまう。
しかし、人間が水中で呼吸、即ち肺に酸素を取り込む事など出来るはずがない。
そこでやっと「夢か」と気づく。
夢の中で「これは夢なのだ」と認識すると、とても虚しくなる。
そもそも人間の脳内で自分の意思と夢とがドッキングする事なんて可能なんだろうか。
いや、これはただ、夢の中の自分が夢を見ていると認識しただけで、実際には、夢を見ている自分が夢を見ていると認識した、夢を見ているだけなのかも知れない。
こんな複雑な事を考えている(しかも睡眠中に)僕の脳はちゃんと休息し、情報、記憶を管理してまた厳しい明日に耐えられるのか?
それとも夢の中で複雑なことを考えている、夢を見ているだけで実際の所余り関係ないのかもしれない。
まぁいいや、本当に何も考えるのを止めよう。
朝起きたら頑張った脳のためにチョコレートでも食べてやろうじゃないか。
なんて脳にチョコレートを与える指令を下しているのも、僕の脳な訳であって、だとしたら、とんでもなく図々しい脳じゃないか!!と、図々しい脳にツッコミを入れているのも又、僕の脳以外の何者でも無いのだ。
……全く因果な世の中だよなぁ、と訳のわからない事を呟きながら、僕は目を覚ました。
目覚まし時計は、6時59分を指していた。
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