蒼空から降ってきた少女
キーンコーンカーンコーン。
せめてこの全国統一されたチャイムで一限目の始まりを伝えて欲しかった。
我が成高学園中等部のチャイムは、校歌だ。
何故学園長がこのような訳の分からない事をしたのか知る由もないが、取りあえず想像して欲しい。
一日十回以上は校内に響き渡る、時間を伝えるためのチャイムが、すべて校歌なのだ。
鬱陶しい事この上ないとは思わないだろうか。
友人の誰に言っても
「別にいいじゃん」
の一言で終わらされてしまうのだが、僕が神経質過ぎるだけなのか?
否、絶対にいるはずだ。
朝など五分おきに大音量で流れてくる校歌に殺意まで覚える者も。
校歌について二年分の怒りが積み上がっているため話すと夜が明けそうなので閑話休題。
僕の斜め前に座っている紅崎真白が転校して来てから一週間が過ぎたと言うのに、僕は紅崎真白と目を合わせる事すらままならなかった。
転校生を持て囃すほとぼりは冷めたが、どこか周りを見下した態度を、クラスの女子達が良く思うはずもなく、何時も独りで行動していた。
「……あれ」
段々と教室内がざわざわし始めたことに気づく。
どうやら、授業開始のチャイム、否、校歌が鳴ってから、数分がたったにも関わらず、教師がやって来ない事が理由のようだ。
僕は前の席に座っていた鷹野の肩を叩いた。
「次、数学だよな?田口遅くないか?」
「授業忘れてるんじゃね?もう爺だしさ」
鷹野はハハっ、と笑った。
瞬間、教室の扉がガラガラと音を立てて行きよい良く開く。
鷹野も僕も、クラスのみんなも、ドアに目をやった。